大日本印刷株式会社(DNP)
(7912)
2024年10月31日公開
DNPの主力事業
- 「印刷」は今や「表面処理エンジニアリング」であり、中身は半導体やディスプレイを中心としたテクノロジーの会社
株主提案の背景①
- 売上の2割にあたる主力事業が、営業利益の7割を稼いでいる状況
株主提案の背景②
- 「何をやらないか」を明確化できていない
- 経営資源は有限であり、「何によって持続的に成長する利益を確保するのか」という観点を経営に持ち込める人材が必要
株主提案の概要(2024年6月開催 第130期定時株主総会)
- 定款上、16名が取締役の上限であるところ、12名の会社提案に1名を追加する提案
好調・日本企業、今後の戦略 すべては経営者次第
楠木建・一橋大学特任教授(2024年4月2日 日本経済新聞 経済教室)
ポイント
- 外部環境や事業立地による利益は一時的
- 業界内の位置取りと戦略ストーリー重要
- 経営者は長期利益創出へ血気と欲を持て
経営者の使命は長期利益、すなわち資本コストを上回る持続的な利益の創出の一点にある。企業価値だけではない。顧客満足も結局、長期利益に反映される。企業の社会貢献の王道は社会的目的のために使える原資を創出することにある。利益を出し納税する。そこに企業の社会貢献の本筋がある。喫緊の課題の賃上げにしても根本は同じだ。元手がなければ労働分配はできない。稼ぐ力こそが持続的な賃上げを可能にする。長期利益はすべてのステークホルダー(利害関係者)をつなぐ経営の王道だ。
北島家による3代世襲
議決権の1%も所有しておらず、創業家でもない北島家が3代にわたって社長を世襲している
氏名 | 任期 | |
---|---|---|
北島 織衛 | 1955-1979 | 中興の祖 |
北島 義俊 | 1979-2018 | 北島家による経営体制を確立 |
北島 義斉 | 2018- | 体制を受け継ぐ |
株主総会の結果
- 積極的なキャンペーンは行わなかったが、効果的かつ合理的な提案であると認められ、27.7%の賛成を獲得
- 野村AM、日興AM、AM ONE、GSAMなどの大手機関投資家から賛同を得た
議案 | 議案内容 | 賛成比率 |
---|---|---|
第1号議案 | 剰余金の処分 | 99.2% |
第2号議案 | 取締役の選任 北島 義斉 宮 健司 山口 正登 黒柳 雅文 杉田 一彦 三宅 徹 宮間 三奈子 金沢 貴人 宮島司(社外) 田村 良明(社外) 白川 浩(社外) 杉浦宣彦(社外) |
74.6% 95.2% 95.2% 97.4% 97.3% 97.4% 97.4% 97.5% 96.1% 98.9% 98.9% 99.1% |
第3号議案(弊社提案) | 取締役の選任 楠木 建(社外) |
27.7% |
株価の状況
株主提案後の会社の動き
- 初のIR Dayを開催
- 「ノンコア・不採算部門のカーブアウト」という文言がはじめて公のIR資料に記載された
- これまで不明瞭だった「構造改革」について、具体的な言及が行われた
-
2024年8月、出版印刷事業についての組織再編を発表。年々厳しさを増す印刷事業について、製販一体の体制構築を行う内容
カタリスト投資顧問株式会社(以下「当社」といいます。)が提供する情報に関しては万全を期しておりますが完全性、正確性に対して一切の保証を与えるものではありません。
当ウェブサイトに含まれる情報もしくは内容を利用することで直接又は間接的に生じた損失に対し当社は一切責任を負いません。
当ウェブサイトの情報は、情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的にしたものではありません。
当ウェブサイトの著作権は、カタリスト投資顧問株式会社に帰属し、許可なく営利目的の複製等を行うことはできません。